37℃のグラビティ
言ってしまった後、きっと新海はらしくないアタシをからかって笑うんだろうと思っていたのに……


「あるよ。じゃあ、すげぇ我儘な事言っていい?」


新海は少しだけ意味深な眼差しで、薄く笑った。


「何?」


いったいどんな我儘な事を言われるのかと、緊張気味に訊き返したのに……


「柚は今のまま、変わらずいてよ」


って……あまりに拍子抜けする新海の言葉。


「それのいったいどこが我儘?」


「柚に変わんないでほしいなんて、俺の究極のエゴじゃん」


「アタシには何も出来る事ないって、言われてるみたいに聞こえる」


「その逆。そんな柚に救われてんだ……俺」


新海の言ったその一言で、救われた気持ちになったのは、むしろアタシの方で……


新海がエゴだと言った言葉の意味を、この時のアタシはまだ理解していなかった。
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