37℃のグラビティ
アタシの目から零れ始めたしずくは、とどまるところをしらない。


頬をつたうものもあれば、足元に弾けたものは、まるで雨粒みたいな跡を作った。


スマホを持つ手が震える。


立っている足が震える。


声を殺そうと噛みしめる唇が震えて……


寛樹の名前を呼ぶ心が震えた。


今、マンションの前にいる事なんて、頭の片隅にもなくて。


アタシの後ろから伸びて来た手が、オートロックの解除番号を押した事で、ふと我に返る。


ゆっくりと振り返った先には、新海の少し驚いた様な顔。


その顔はすぐに、アタシの瞳の中、ぼやけて滲んだ。
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