のぼりを担いだ最強聖女はイケメン辺境伯に溺愛されています
 王都の噂はフォールにも届いた。

 信心深い王と王太子は毎日聖女たちと石段を登っている。
 王も、それを補佐する王太子も、政務の腕はキレキレで、何事においても慈悲深いと大好評であるという。

 カサンドルから研究の進捗を聞いていたベルナールは、その合間に聞いた王都の噂に耳を疑った。

「誰の話だ?」
「アンセルムとエドモンですよ」

 もともと呪いは傍若無人な王を戒めるためにかけられた。辛い修行を課すことで精神や肉体を浄化し、よい王になってほしいという願いが魔女にはあったのではないかという。

「その修行を聖女に丸投げしてきたせいで、おそらく、これまでまったく呪いが解ける機会がなかったのです」
「ならば、今の状況はやつらにとって好機ということか」
「そういうことになりますね」

 カサンドルはふふふと笑う。

「いろいろ問題の多い人たちですが、古今東西の王と比べて、特に非道というわけでもありません」
 
 フォールの頑張りのおかげもあるが、国はそこそこ平和で、ものすごく豊かというわけでもないが、食うに困るほど貧しいわけでもない。

「生まれた時から呪いを受けるというのも、思えば気の毒なことです」
「確かにな」

 ベルナールも笑った。
 アニエスを狙った時は憎くて殺したいばかりだったエドモンに対し、ほんのわずかながら同情を覚える。それを上回る感情として、いい気味だという気持ちがあっての笑みだということは黙っておく。

「本当によい王になり、呪いが解けるなら、それはよいことではないかと思います。私が生きている間に、この仮説が証明されることを願うばかりですが……」

 カサンドルがベレニスから仕入れた情報では、王たちはすでに二度目のリセットを食らい、また一からやり直しをしているらしい。
 道のりは遠そうである。

「聖女に丸投げした代の王にはウンザリしますが、そのおかげで、バシュラール王国はほかに類を見ないほど、優秀な聖女を生み出す国になりました」

 そうして生まれた最強の聖女が、今、自分の妻になって、自分をはじめとしたフォールの兵士たちを支えてくれていると思うと、ベルナールは深い感慨を覚えた。

「何がどう転ぶかわからんな」

 アニエスが来てから、ムンドバリはもはやフォールに手も足も出ない。
 バシュラール王国の平和の一端は、間違いなく聖女であるアニエスとカサンドルが支えているのだ。

 カサンドルの報告が終わると、執務室の扉が開いてアニエスが顔をのぞかせた。

「ベルナール、お昼ごはんですって」
「おとうしゃま!」
「おそとで、みんなでたべゆのよ」

 小さな二人の娘たちが左右からベルナールによじ登ってくる。

「あらあら、お父様は大人気ね」

 カサンドルが笑う。
 廊下ではソフィも笑いながらベルナールたちを待っている。

 窓の外には兵士たちの賑やかな声。

「行きましょうか」

 アニエスとカサンドルに挟まれ、二人の娘を抱いて、ベルナールは執務室を後にした。


       ―了―

 最後までお読みいただきありがとうございました。


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