身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「成さん、手先器用ですよね。包丁の使い方も上手でした」
夕食を終えた後、洗い物もふたりで協力していた。
成さんは『料理をしない』と言っていたのにもかかわらず、私が調理しているところへやってきて手伝ってくれたのだ。
もちろん私の指示で動くだけだったのだが、彼は実にスムーズにこなしてくれた。
「見様見真似だったんだけど、褒められるとうれしいね」
私は手をタオルで拭いて、食器を片付ける成さんを振り返る。
「そうだ。私はなるべく朝食をとって、お弁当も持っていくようにしてますが、成さんは? 必要なら、ひとりぶんもふたりぶんも変わらないので用意します」
「本当? どっちもお願いしたいな」
「わかりました。ちなみに、なにか苦手なものはありますか?」
私が質問すると、成さんは口元を手で押さえ、言いづらそうにぽつりと答える。
「ピーマンとしいたけ」
私は意外な一面を見た、と目を丸くした。
子どもみたい。見た目は頼りがいがあり、聡明で仕事ができると噂を耳にするほどの完璧な男性なのに。
「……カッコ悪いから、やっぱり黙っておけばよかったかな」
悔しそうにつぶやく彼を見て、思わず吹き出した。
「いえ。そういう一面もあるんだなあって、親近感が湧きました」
およそ欠点が見つからない人だと思っていたから。
そうは言っても、好き嫌い程度は欠点のうちに入らないけれど。
くすくすと笑っていたら、成さんはほっとした声で言う。
「それならよかった。ほら、ありのまま全部見せるって約束したから、やっぱり嘘はつけないと思って」
約束……。確かにそうだった。
彼はきちんと約束を守る誠実な人なのだと知り、自然と心を開いていく。
「じゃあ、私も。あまり立派なものは期待しないでくださいね。本当は人様に出せるほど、まだ料理は上達してなくって。でもお世話になりますので、そのくらいは」
「『お世話になる』とか堅苦しいのはナシ。だって俺たちは付き合ってるんだから対等でいいはずだ」
頭にポンと手を置かれ、上品に弧を描く唇が再び開く。
「ってわけで、先にお風呂に行っておいで」
成さんの笑顔はやっぱり有無を言わせない。
けれど、原因は彼に笑いかけられたときにドキリとしてしまう自分にあると気づく。
私は断り切れる自信がなくて、「ありがとうございます」と言って足早にバスルームへ向かった。
夕食を終えた後、洗い物もふたりで協力していた。
成さんは『料理をしない』と言っていたのにもかかわらず、私が調理しているところへやってきて手伝ってくれたのだ。
もちろん私の指示で動くだけだったのだが、彼は実にスムーズにこなしてくれた。
「見様見真似だったんだけど、褒められるとうれしいね」
私は手をタオルで拭いて、食器を片付ける成さんを振り返る。
「そうだ。私はなるべく朝食をとって、お弁当も持っていくようにしてますが、成さんは? 必要なら、ひとりぶんもふたりぶんも変わらないので用意します」
「本当? どっちもお願いしたいな」
「わかりました。ちなみに、なにか苦手なものはありますか?」
私が質問すると、成さんは口元を手で押さえ、言いづらそうにぽつりと答える。
「ピーマンとしいたけ」
私は意外な一面を見た、と目を丸くした。
子どもみたい。見た目は頼りがいがあり、聡明で仕事ができると噂を耳にするほどの完璧な男性なのに。
「……カッコ悪いから、やっぱり黙っておけばよかったかな」
悔しそうにつぶやく彼を見て、思わず吹き出した。
「いえ。そういう一面もあるんだなあって、親近感が湧きました」
およそ欠点が見つからない人だと思っていたから。
そうは言っても、好き嫌い程度は欠点のうちに入らないけれど。
くすくすと笑っていたら、成さんはほっとした声で言う。
「それならよかった。ほら、ありのまま全部見せるって約束したから、やっぱり嘘はつけないと思って」
約束……。確かにそうだった。
彼はきちんと約束を守る誠実な人なのだと知り、自然と心を開いていく。
「じゃあ、私も。あまり立派なものは期待しないでくださいね。本当は人様に出せるほど、まだ料理は上達してなくって。でもお世話になりますので、そのくらいは」
「『お世話になる』とか堅苦しいのはナシ。だって俺たちは付き合ってるんだから対等でいいはずだ」
頭にポンと手を置かれ、上品に弧を描く唇が再び開く。
「ってわけで、先にお風呂に行っておいで」
成さんの笑顔はやっぱり有無を言わせない。
けれど、原因は彼に笑いかけられたときにドキリとしてしまう自分にあると気づく。
私は断り切れる自信がなくて、「ありがとうございます」と言って足早にバスルームへ向かった。