人狼と黒いハンター達
不気味な図書館
重い荷物の入ったリュックを両手で抱えて、私はトイレの横にある静かな廊下で待っていた。

ガタガタと椅子を引ずる音がすると、教室からはたくさんの生徒が教室を出て来た。

その中には私が待つ人の姿はない。

彼女はいつも遅くまで教室で友達とおしゃべりしてから私の所へ来る。

人を待たせているよいう自覚がないのだ。


私は重たいかばんに引っ張られるようにして、その場にしゃがみ込んだ。


「はぁ…」





ブーッブーッ

携帯が振動して、画面が光った。


表示されたメールを開くとそれは_由衣@ゆい_からで、私は文字を読むとがっかりした。

『ごめん!今日用事あるから先に帰っちゃった。明日は帰れるよ♡』

先に帰っちゃったって何それ。

待ってたの私なんだけど。


帰ってすぐにこんなメール送るくらいだ、最初からわかってて先に帰ったんだろう。


私は抱えていたリュックを背負うとスカートに付いた埃をはたいた。


そもそも私がこんなところで待っているのが悪いんだけど、昇降口へ続く階段のそばはあまりにも人が多すぎて立って居られない。

私は先生に合わないように願いながら、誰もいない昇降口へと脚を運んだ。

最近由衣は変だ。

昔はよく一緒に帰って、楽しい会話も沢山したのに。クラスが変わってから彼女はいつも冷たい。

いつもよりスカートを短くして、カラーリップをつけている。

校則で禁止されているのにも関わらず、由衣は化粧をやめない。



そんなことを考えながら、私は帰り道の途中の路地裏にある図書館へ寄った。


と言っても、

市営の図書館ではないようだ。

周りは木や草で覆われていて、魔女の家呼ばれるほど不気味だ。この中に入って行く人のほとんどはニートやお年寄り。

普通に目の前を通っていても中に入ろうなんて思う人はいないだろう。


最近は一人で帰ることが多いから、私は週に一回はここ来ている。


最初に来たときは、不気味で何度も戻ろうと思ったけれど、今では堂々と足音を立てて中に入っていける。

中はオレンジ色の電気が、雰囲気を作っている。

「こんにちは、マーガレットさん」

図書館を切り盛りしているおばさんは、マーガレットと言い外国から来たらしい。

マーガレット

よくある童話とかに出てきそうな名前だ。


マーガレットおばさんは、私を見るなりニッコリと微笑んで嬉しそうにした。

「合言葉は?」

そう、この図書館に来るときは合言葉を言わなければならない。


「本は意思を持っている。決して乱雑に扱ってはならない」

そう言うと、マーガレットおばさんはにっこりと微笑んだ。

「どうぞ」

そう言って開けてくれた扉の奥には、たくさんの本がたくさんの意思を持ちながら並んでいた。

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