若女将の見初められ婚

それにしても、白無垢に綿帽子が、こんなに重いと思わなかった。

前を歩く紋付き袴の背中を、チョコチョコと追いかけていく。

ふと、旦那様は私が遅れているのに気づき、立ち止まってくれた。振り返って追いつくのを待ってくれる。

その優しげな微笑みを見ると、胸がキュッとなった。

『ほら、つかまって』

差し出される手をそっと握ると、大きな手の中に私の手はすっぽりと入った。

しっかりと握ってくれる手の温もりが幸せを予感させる。

この手を信じて頑張っていこう。


私、橘 志乃(たちばな しの)は、今日から岩倉 志乃となり、京都の老舗呉服屋「いわくら」の若女将(わかおかみ)になります!

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