LOVEPAIN⑥
「んな母親も、俺が小学5年の時に病気で呆気なく死んで。
そっから俺は施設に入れられて。
中学3年の時に、モデルにならないかって、体を売ったオッサンがたまたま芸能事務所の社長で。
そん時思った。
俺は誰を利用しても、のし上がる。

男に搾取されてばかりの母親みたいにならないって」


それが、佐藤雲雀が常に放っている、
怒りの正体なんだな。


私もこの世界に入ろうと思った時は、
この人くらいの覚悟や怒りが有ったはずなのに。


成瀬や、色々な人達と触れ合ううちに、
いつの頃か、そんな気持ちを忘れて行っている。


佐藤雲雀は、私と違いブレない。



「高橋みかちゃんも、利用しているの?」


ふと、浮かんだ。


人気アイドルである彼女とのスキャンダル。


それで、佐藤雲雀の名前を世間にまた一段と広めたと思う。


「あの女とは、こないだ別れた」


「えっ、そうなの?」


驚きで、体を起こした。




だから、大晦日の今日、違う女の子をバイクの後ろに乗せていたんだ。



「マジになりたくないから」


頭の中に、高橋みかちゃんの顔が浮かぶ。


あのドラマの打ち上げの時、彼女にサインを貰った時の。


女の私から見ても、彼女はとても魅力的だし、
あの一点の曇りもない笑顔。


「彼女、凄いいい母親になりそう」


そう、溢れるように口から出た。


「俺は、誰が側に居ても変われない」


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