LOVEPAIN⑥
今年一発目のAVの仕事が始まった。


1日目にパケの撮影で、2日目はロケでキャンプ場のプレハブ小屋みたいな所で撮影した。


そして、3日目の今日は、
WDSのスタジオで、シンプルに男優さんと絡みの撮影。


そのスタジオに向かう、アルファロメオの車内。


いつもとは何処か雰囲気の違う成瀬に、気付いた。


「成瀬さん、今日なんか気合い入ってません?」


「え、変か?」


成瀬は、私の目線の先の自身の髪の毛に触れた。


普段それなりにセットはしているけど、
今日は一段とピッチリと固めているという感じ。


それに、スーツも真新しいのかも?と、
その高そうなブラウンのスーツを見る。


「別に変ではないけど、
今日何かあるのかな?って」


今日は成瀬も私に1日付き合い、撮影がある。


それから、って事。


「いやー、実は今日芽衣子の両親と飯行く事になって。
K県に住んでる芽衣子の両親が昨日からこっちに来てて、
それで、まぁ…」


照れているのか、成瀬の口調は何処か恥ずかしそう。



「あれですか?
娘さんを僕に下さい、的な?」


成瀬と芽衣子さんの婚約がクリスマスに決まり、
段々と現実に動き出しているんだな。


芽衣子さんの両親も、遠方遥々娘の婚約者に会いに来るのか。


「まあ、そうだけど。
なんか気が重いな…」


今から既に緊張しているのだろうか?


成瀬からその緊張が伝わって来て、私迄ソワソワとしてしまう。

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