Re:START! ~君のバンドに、入ります~
 今もう一度やれって言われたら、絶対にできない気がした。


「だから大丈夫だってば。お前の歌なら、絶対みんな喜んでくれるって」

「大丈夫じゃない! 私の歌でみんなが喜ぶなんてこと、絶対にないからっ。私にバンドなんて、本当に無理ー!」


 絶叫するように、いかに自分には向いていないかを主張する私。

 そんな私を、律くんはしばらくの間驚いたような顔をして見つめていた。

 彼の少し後ろにいる響斗くんは、曇った顔をしている。
 
 ――すると。


「……そんなに俺たちの言ってることが信じられないって言うのかよ」


 律くんが私から顔を逸らして、ぼそぼそとそう言った。

 怒っているようだった。
 
 彼らしくない、静かな怒り方。


「あ……」


 いたたまれない気持ちになってしまった私は、恐る恐る律くんを見る。

 しかし不機嫌そうな横顔が見えるだけで、こっちを向いてはくれない。


「そういう意味じゃなくて……あの……」


 必死に言い訳するけれど、律くんも響斗くんも、何も言ってくれなかった。


「ご、ごめんなさいっ」


 私は耐え切れなくなって、第二音楽室から出て、廊下を走った。

 ふたりは追いかけてこなかったので、私はそのまま家へと帰った。
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