レイン。序章
俺の持ち場は倉庫の中。集落のかなり奥のほうだった。

ゴートは一番入り口に近いところに待機している。

サンドラをはじめ、残りの5人はそれぞれ、テントの陰に潜んでいた。

空を見上げると、綺麗なミルキィ・ウェイが天球を横切っていた。

月は出ていないが、周りはじゅうぶん見える。

まるで一年前のあの日のような星空だった。

俺は目を閉じた。

瞼の裏に、母さんの最期の姿が映った。

腰の短剣がひんやりと足に当たる。

そうだ。俺はあの時、冷静だった。

目の前で倒れた父さんを見て、迷わず家へ向かうことを決めた。

母さんの命と、メルの命を、正確に秤にかけた。

母さんが、俺と妹が生き延びることを望んでいることも理解した。

そしてそれを、躊躇なく実行した。
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