レイン。序章
俺たちは、テントを飛び出して疾走した。

続いて、男がサーベルを手に追ってきた。

メルはほとんど引きずられるようにしてついてきた。

俺は、メルがよろけても走り続けた。

素早く振り返ると、男がサーベルを振り上げるのが見えた。

俺は剣を構えたが、遅かった。

メルを庇うようにして身体を男に向けた。

俺の左目に、赤い筋が走り、その一瞬ののちに、鮮血がほとばしり出た。

「お兄ちゃん!」

小さな妹が絶叫した。

俺は左目を押さえてうずくまった。

はぁはぁと息を切らしながら、男がまたサーベルを振りかざした。

俺はブーツからナイフを抜き取ると、男の太ももに突き刺した。

ギャアッ、と男がうめいた。

激昂した男は力任せにサーベルを振った。

俺はそれをかわし、メルの手を取って走り出した。

背中に、また一太刀を食らった。

痛みはもはや感じなかった。
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