きっと100年先も残る恋
一度沈み始めると、あっという間に太陽は身を沈めていった。
私たちはしばらくその場から動けずにいた。

「女は上書き保存、男は名前を付けて保存って言うでしょ」

雄介がそう口を開く。

「俺は多分、何回来ても、何回見ても、今日英子とここで観たことを思い出すんだと思う」

いつのまにか、完全に取り残された私たち。
静かになった富士山と湖。

「なんでまだ付き合ったばっかりなのに、別れた後を考えるの」
「違うよ、凄いものを英子と見たなってことだよ」

やっと私たちは富士山から目を離して互いを見つめ合った。

そこでやっと、サファリパークには行かなかったことを私は思い出した。

サファリパークにも行っていれば、ライオンとかゾウとかシマウマを見ても、私のことを思い出してくれるかもしれない。

ふとそんなくだらないことを考える。
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