きっと100年先も残る恋
突然の電話
雄介がいつも通りブームストックの編集部に行こうとした時、雄介の携帯電話が鳴った。

「どこだろ、知らない番号」と、画面を私に見せてくる。

たしかにその手の中の03から始まる番号の先は想像つかない。

「東京だね」
「編集部の別の番号かな」

私たちは顔を見合わせる。
「まあ、いいや」と雄介はすぐに電話に出た。

「はい、もしもし高松です」

靴を履きながら時計を気にしてる。

「はい、はい」

笑顔で私の方を振り向いて手を振りかけてきた、その時。

「え」

雄介の動きが止まった。
上がっていた頬の筋肉が一気に落ちる。

人から表情ってこんな風に消え落ちるんだ。

そう思うくらい、顔色を変えた。

電話の外側の私には内容は想像もつかない。
編集部なんだろうか、事務所とか。

長い長い30秒くらいの時間。
沈黙が玄関を包む。

「はい」

やっと雄介が答えた。

雄介は出ようとしていたのに、靴を脱いで部屋にのろのろと戻る。
生気のない後ろ姿。

私はなんとなく玄関で立ちすくんだまま、向こうの部屋の雄介をただ眺めていた。
何を話しているのかは全く聞き取れない。

5分くらいで一度電話を切った雄介は、なぜか優しい顔をしていた。

「ちょっと、待っててね」

そう私の肩に手を置くと、カバンを持って静かに部屋を出ていった。

どこへ行くんだろう。

私は部屋に一人ぼっちになった。

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