夜が明けていく。
プロローグ
あの頃の私は、全てが順調だった。

小説家である叔父の影響で本を読むのが大好きになり、空想しては物語をたくさん考えていた。

小説家を目指すようになったのも、ごく自然な流れのように感じられた。

一度きりしかない人生でも、小説の中でなら私はどんな人生にもどんな人物にもなれた。

それを考えるのはとても楽しくて、とても幸せで、物語を考えるのは私の人生の一部になっていた。

高校2年生の時、両親や叔父に黙って出版社の文学賞に応募した。

ほんの腕試し、自分の実力を確認したかった。

ところが、有難いことに私の小説は“新人賞”を受賞し、瞬く間に小説家としてのデビューが決まったのだった。

有名になりたかったわけでも、世間に認められたかったわけでもない。

私の望みは、物語をたくさん考えて小説を書きたかっただけ。

大好きなことを仕事にしたかっただけ。

ただ、それだけのことだった。

そんな幸せな日々は瞬く間に影を落とし、私の人生を狂わせていった。

毎日が順調でキラキラ輝いていた未来、そんなものはもう存在しない。

私が今いるのは、暗くて先が見えない真っ暗闇だ。

夢なんて持つからいけなかったんだ。

夢を叶えるために頑張った自分が馬鹿だったんだ。

人生には、どんなに頑張ったってどうにもならないことがある。

このまま目立たずひっそりと、ただ日々が過ぎて行くのを待つしかないんだ。
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