ひと雫ふた葉  ーprimroseー

3es.雫と舞う花弁





 買い物の帰り道。

 お兄ちゃんより先に歩いていたわたしは、優しく照りつけるお日様の元で、白無垢に身を包んだ新婦さんを見た。

 たくさんの人に囲まれ、その表情はとても幸せそう。そばには新郎さんも寄り添い、彼女に白い花束を渡した。

────あれ、あの花……。

 どこかで見たことがあるような気がする。小ぶりで大人しめな花弁をつけた、可愛らしい花……──。




「雨香麗! ごめん、遅くなった。それ重くないか?」




 後ろから駆けて来たお兄ちゃんの声に我に返る。




「あ、ううん。大丈夫」

「なんだ……結婚式? 羨ましいのか?」

「違うし!」




 べーっと舌を出して車まで駆ける。

 次に目を向けた時にはもう、新郎新婦の2人は大きなお屋敷に入って行って見えなくなってしまった。

 でもわたしの脳裏には確かなものが映り出す。雨降る花畑の中儚げに笑う紫樹と、神憑で神様の言っていた言葉。




────プリムラ・シネンシス。




 その花言葉は……──永遠の愛。




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