ひと雫ふた葉  ーprimroseー




「なっ、なにわろてんねん!!」




 耳まで真っ赤にした宗徳を見て涙が出るほど笑ったあと、お腹を押さえながら瑮花は口を開いた。




「あたしね、護身術習ってるんだ。確かにさっきの奴ら不快感はすごかったけど……でも、そこまで弱くないよ」

「そうか……でもお前ほんまいつでも無茶ばっかしはる。オレの心臓もたへんわ」




 零れ落ちたその言葉が瑮花の耳に届いた途端、その顔はほんのり朱に染まる。視線を落としていた宗徳はそれを知らない。

 瑮花はそれをひた隠し、背を向けて立ち上がると自分の気持ちを切り替えるようにここへ来た目的について話し出す。




「それで、麗司(れいじ)さんについてなにかわかった? あたしは一応、あいつらから麗司(れいじ)さんがすごいモテてる、って情報は聞き出せたけど」

「ああ、それな」




 先程の甘酸っぱい空気は一変、すぐに真剣な表情をして語り出す。

 宗徳が話かけたのはこの大学に通う男子生徒2人組だった。

 どうやら麗司(れいじ)は本当に学校内で知らない者はいないほどのモテ男であり、容姿端麗、文武両道といったまさに完璧と呼ぶ他ない人物であり、その反面いつも妹を気にしていたらしい。

 最近からはあまり長時間、大学に滞在していることがなくなり、授業が終わればそそくさと帰ってしまうと言う。どうやらそれにも妹が関係しているのだとか。

 たまたまその男子生徒の片方がこれから麗司(れいじ)と同じ授業を受ける予定で、親切にも2人が待っていることを伝えると言ってくれた。




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