蒼春
あれから2週間が経ち、花火大会当日の朝。

部屋の窓から外を眺めると、今日はいつもより街が賑わっていた。

人いっぱいいるなぁ。

全国的にも有名な花火大会ということもあって、そこらを走る車は県外プレートばかりだった。

蓮と一緒に近くのスーパーまで買い出しに出かけた後、家族みんなでお昼ご飯を食べる。

『今日は天気がいいねぇ。きっと花火が綺麗に見れるわよ。』

母はそんなこと言いながら家事をしている。

「…ついにうちの子供達が花火を見に行くなんてな。」

毎年、花火を見に行くのを躊躇していたからか父は感心していた。

家でゆっくりしていると、いつのまにか時計の針は3時半を示していた。

「乃蒼ー、あいつら迎えに行くけど一緒に駅行く?」

蓮だけに行かせるのも申し訳ないしなぁ…。

『行くー。』

2人で最寄り駅まで歩いていく。

家から駅までは10分くらいかかるので、しりとりをしながら時間を潰した。

駅に着くと、徳島先輩と一ノ瀬先輩が改札から出てくるのが見えた。

『あ、おーい乃蒼ちゃん!来たよ〜。』

そう言って駆け寄る徳島先輩。

やっぱり休日ということもあって、雰囲気がいつも違う。

すごく新鮮で可愛い!という隣の男の心の声を代弁しておく。

「やっほー!」

一ノ瀬先輩は相変わらず元気そうだった。

鈴木家に到着すると、母によって男子の着付けが始まった。

すっかり母は一ノ瀬先輩のトリコになってしまったようで、自分の部屋にいても親の黄色い声が聞こえてきた。

続いて女子の着付けをしてもらうので、男子2人にはあたりを散策してもらった。
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