二重人格者の初恋
午後の仕事を終え、家までの道のりを歩いていると、これまでと全く同じ道、朝と全く同じ道のはずなのに、全然違った景色に見えた。
すれ違う人、いつもと同じスーパーの店員さんも初めて会う人のように感じた。

『きっとこれまでは人と深く関わってはいけないんだって自分に言い聞かせてた部分があったんだろうな。』
そんなことを思いながら家でいつも通りに晩御飯とヒロシの為の朝食と夕食を作っていた時、スマホが鳴った。

画面を見てみると、ヒロシが好意を寄せている女性からの電話だった。
『昨日の今日で早速、連絡が来るなんて凄いな。ヒロシってそんなにモテるのか?』
私はヒロシに対して、これまで以上に興味を持つようになっていた。

と同時に、ヒロシが好意を寄せている女性の声や話し方ってどんな感じなのかを知りたいという欲求が心の奥底から湧いてきているのも実感していたが、何とかその欲求に打ち勝ち、電話が鳴り止むのを待った。

『そういえば、まだ日記を読んでなかったな。』
日記の存在を忘れていたことを思い出した私は、食事を済ませ、食器を洗い、あらゆる家事を手際よく済ませて、日記を開いた。

日記の最後にあった『ビデオメッセージ』について、私もヒロシと会話してみたいと思っていたので、【OK】と記載し、10個書かれていた質問に対して、とりあえず回答しておいた。

そして、私は初めてヒロシに向けてポストイットでメッセージを残した。
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