ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 名前だけ教えたのでもういいだろうと思い立ち去ろうと立ち上がった時に誠に腕を掴まれた。

「……何?」

「俺って母さんに捨てられたのかな……」

 やっと少し落ち着いたと思ったら矢先にまた目に涙を溜めて俺に聞いてきた。
 そんなもん知らねー! と突き放してしまいたかったが部屋に入る前に施設の先生に優しく仲良くしてあげてね、と釘を刺されたばかりだった。

「まぁ、そうなんじゃね?」

 俺なりにオブラートに優しく言ったつもりだった。なのに誠はうわーんと更に大きい声で泣き出した。

「ったく、俺だって産まれた時に親に捨てられてるんだから十年育ててもらっただけいーんじゃねーの?」

「……赤ちゃんの時から一人なの?」

 鼻を啜りながら涙を部屋に置いてあったティッシュで拭い、驚いた表情で誠は俺を凝視した。

「そうだよ、俺は零年だけど、お前は十年なんだからいーじゃねーかよ、うるせぇからメソメソ泣くな」

「……うん」

 この日から誠が泣き叫ぶように泣く事は無くなった。
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