ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「お邪魔します……」

 想像していた彼女の部屋はモノトーンでシックな部屋だと思っていたが、彼女の部屋に入るといつものツンツンしている彼女のイメージとは程遠く、とても暖かい色取りの部屋だった。
 明るい茶色のフローリングに丸いベージュのラグ。
見た感じもう一部屋あったが多分そこは寝室だと予想されるのでリビングにあるベージュの二人掛けソファーの上にそっと彼女を降ろした。
 ちょうどブランケットもあったので彼女にそっと掛ける。
 位置が悪かったのかモゾモゾと寝返りし始めた。

「水野さん、鍵はポストに入れておきますよ」

「んん……ん」

 帰ろうと立ち上がると急にギュッと左腕を掴まれたのでグラっとバランスを崩した。
 間一髪で彼女の頭の上に右手を突き覆い被さる形になってしまったが、彼女を潰さなくて良かった、とホッとする。

 まじまじと彼女の顔を見ると改めて思う。
 とても端正な顔立ちで、これでモテないなんて有り得ないだろう。
 今まで一体何人と付き合ってきたんだろう。
何人と身体の関係を持ったんだろう。
もっと早くに出逢えてれば……
見つけられていたら……
 艶やかで綺麗な長い黒髪に手を通す、長い睫毛に小さな鼻とスッと薄いけれども柔らかい唇。
真っ白な柔らかい頬に今すぐにでも擦り寄りたい。
 グッと触れたい欲を抑える。体制を整えソファーの下に腰を下ろした。
 未だにギュッと握られている左腕がジワジワと熱くなる。
< 37 / 232 >

この作品をシェア

pagetop