僕たちには選ぶ権利がある
Xジェンダーというものを聞いたことがある人もいるだろう。男女のいずれか一方に限定しない性別の立場を取る人で、優は日によって自分の性別が男になったり女になったりする不定性という性別である。

優はそのことを高校生になった初日に全校生徒の前で発表し、堂々と毎日を送っている。そんな優の生き方に憧れ、揚羽をはじめ多くの生徒が優と仲良くなっていった。

「みんな待たせてごめん!準備できたよ!」

揚羽がかばんを手にすると、「よし!行こう!」と優が笑う。そして揚羽たちは、映画館へ楽しく話しながら歩いた。



揚羽たちが見る予定の映画は、揚羽たちの好きな漫画のものだ。しかし、その漫画は十代を中心に今ブームになっているため、こんな夕方でも多くの人が見に来ている。

「すごい人……!」

夕方の映画館ってこんなものだったっけ?と驚く揚羽に対し「まあ、人気の作品だから混んじゃう休日より今日観たいんじゃない?」と優が答える。
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