俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
告げられた事実に一瞬衝撃が走るけれど、私はすぐに納得した。

「やっぱり、そうだったんですね」

「でも快が好きなのは芽衣ちゃんだけだから、華のことは気にすることない。
僕も彼女が君にいじわるしないように見張っとくからね……美晴もそれを望んでいるだろうし」

ルイさんは私を励ますようにポンポンと頭を撫でて、部下と一緒に部屋を出ていく。

(私が好きかどうかは置いといて、社長もああやってみんなに言ってくれたんだし……とりあえず、すぐに退職届を提出するのは辞めよう)

気持ちを切り替えるために、ギュッと拳を握る。

(秘書として……CLBKの社員として、与えられた目の前の仕事を全うしよう。
それに、ずっと憧れていた場所に行かせてもらえるんだから)

みんなに申し訳ない気持ちもあるけれど、どうしても憧れの地に行けるという事実には胸が高鳴ってしまう。

『パリに連れていくんだから辞めるなよ』

「……っ」

(私だって本当は辞めたくない。でも……これ以上藤堂快の信用を失うことも、家を終わらせることもできない)

パリから戻ったら退職の話を社長に伝える、私はそう胸に誓っていた――。
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