俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
そんなふざけた質問にも聞かれたらちゃんと答える従順さは変わらなくて、思わず笑ってしまう。
そうとは知らずに、彼女は与えられる快感に耐えている。

(愛しても愛しても愛したりない。芽衣に触れていたい、ずっと)

一人で仕事をしていると、彼女がすぐ近くにいた頃が無性に恋しくなる。
いなくなって芽衣の存在がいかに俺を支え、実力以上の力を発揮させてくれていたのかを思い知らされた。今は離れた場所で戦う彼女を見て、自分もさらに高みを目指していかねばと思えてはいるのだが。

「芽衣が腕の中にいる。離さない」
「え……今……なんて?」

涙目で訊ねた芽衣には、俺の言葉が届いていなかったらしい。
なんだかもう一度言い直すのは恥ずかしくて、俺は代わりに口づけを落とした。

「なんでもない。ただ一緒にいられて幸せだなと」
「……ふふ、私もだよ、快。ずっと一緒にいたい」

そう笑った彼女は、笑顔で俺の体に抱きついてくる。
華奢な腕に力いっぱい抱きしめられて、必死で想いを伝えようとしてくれるのが伝わってきた。

(愛してる、芽衣)

俺たちは大きなプレッシャーに耐えながら、社員の生活を背負って生きている。
一人じゃ息苦しくなる時も、芽衣がいるから大丈夫だ。

(もっと芽衣を見ていたい。大きな可能性を芽衣が秘めてること……ずっと俺は感じてるから)

小さな手に指を絡め、彼女をベッドに縫い付けた。
窓の外に見えるエッフェル塔なんて目もくれない。
俺は美しく微笑む彼女だけに今夜も夢中になっていく――。


END.
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