求められて、満たされた
ここの所殆ど運動をしていなかったからか、そこまでの距離を走ったわけじゃないのに苦しくなっていた。
乱れた呼吸を整え、買ったばかりのルーズリーフを取り出し机に転がっていたシャーペンで文字を書く。
行き詰まったりはしなかった。
あっという間に一つの詞が出来上がり、それを読んで私は胸の奥が痛んだ
ずっと、心の押し入れにしまいこんだ筈の本当の気持ちが湧き上がってくる。
それが吐き気と化して私を襲う。
簡単に割り切れるわけない。
誰でもいいから私を見つけて欲しかった。
ここに居る私を見つけて、手を引いて連れ出して欲しかった。
だから、そんなタイミングで着信をくれたあなたに縋ってしまったんだ。
「もしもし、奈生ちゃん。急にかけてごめんね。」
「……。」
「奈生ちゃん?」
「優登さん、助けて。」
「奈生ちゃん今どこ?家?」
「…はい。」
「すぐ行くから待ってて。」
本当に誰でも良かったのだと思う。
だから後先のことなんて考えずに、タイミングの良かったあなたを利用してしまった。
それが全ての間違いだったと思う。
タイミングが良かった…?
ああ、違うよね。
タイミングが悪かったんだと思う。
お互いに出逢うタイミングが悪かったんだと思う。
もし、違うタイミングで出逢えて居たら、私たちはあんなふうにならなかったんだろうな。
私は、今度こそ許されない罪を彼に犯すことになるのだ。