求められて、満たされた

「そっかそっか!」

きっと、優登さんは場の雰囲気を和ませようとしてくれてるんだろう。

その優しさにほっこりする。

「でも俺、サッカー部なのに筋トレとかランニングっていうさ、短調作業苦手で、いつも嫌な顔しながらやってたんだよね。でも、それを乗り越えて試合中とか最後までしっかり走れるとさ嬉しくってさ。まあ、結局最後まで筋トレとランニング嫌いだったんだけどね。奈生ちゃんは何か部活やってた?」

「私はバレーボールやってました。高校からはアルバイト始めてたんで幽霊部員になっちゃってたんですけどね。」

そう返すと優登さんが笑う。

その笑顔につられて私も少しだけ口角が緩む。

「バイトか。だからか。奈生ちゃん、接客上手だもんね。やっぱ器用だよね、お酒の名前とか結構覚えるの早いし。勉強得意だったでしょ。」

「いえ。私、勉強は苦手でした。テストも赤点といつも戦ってましたし。」

「え!以外!まあ俺も勉強苦手だけど。でも、テスト前っていつも謎の自信あるんだよね。なんかいけそうな気がするって。いつも、その自信は空振りするんだけど。」

「あはは。それわかります。」

「だろ?でも俺、授業中絶対寝ないんだよね。めちゃくちゃ真剣にノート取ってんの。でも毎回赤点だから先生に不思議がられた。ノートは取ってるけど頭の中いっつもサッカーの事考えてたからそりゃ頭に入ってるわけ無いなって自分では思ってた。」

優登さんはサッカーの事を口にする時すごく楽しそうになる。

小学校から高校まで続けるって事は相当サッカーが好きなんだろうなって思ったし、優登さんの話し方からもそれが伝わってくる。

私にとって音楽が夢中になれるものだったように、優登さんにはサッカーがそうであったんだろうな。

「奈生ちゃんはさ、音楽、好き?」
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