求められて、満たされた
詞をいくつか書き上げると、スマホが鳴った。
電話だった。
LINEではなく、電話番号からの着信は珍しい。
電話番号を見て、更に驚き急いで電話に出る。
「もしもし。」
「あ、奈生?」
「うん。久しぶりだね。」
どれくらいぶりだろうか。
2年半ぶりくらいかな。
懐かしい声に胸が騒ぐ。
「俊介、だよね。」
「そうだよ。」
豊川俊介(トヨカワシュンスケ)。
彼は私にギターや楽譜の読み方など、音楽の基礎を私に教えてくれた人。
そして、元彼だ。
私が中1の頃から高校1年生の終わり頃まで付き合っていた人。
彼は2つ年上で高校卒業と同時に上京する事が決まっていて、私はまだ高校1年生だった事もありそのまま別れてしまった。
「奈生、上京してたんだな。」
「どうして?」
「駅ビルのステージ、偶然見かけてさ。」
「そっか。うん。今年からこっちに出てきたの。」
「なあ、奈生。今から会えない?厳しい?」
「いいよ。」