占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
その日の夜、そろそろ店を閉めようかというタイミングで、3人連れの男性客がやってきた。服装は、どう見ても庶民。けれど、隠しきれない高貴さが、そこかしこから滲み出ている。その中心にいるのは……

「ユリウス……ですよね?」

疑問系ながらも、間違いないと確信している。男性はちらりと私に目を向けると、〝いかにも〟と答えた。

「……ああ、ここは緩衝地帯だったな。私のことは、ただのユリウスだと思って接してくれ」

「言われなくても、すでに敬称をつけてないけど……とりあえず、どうぞ」

席へ案内すると、ユリウスは大人しく従った。2名の護衛が、その背後に立つ。

「落ち着かないわね。一緒に……ってわけにもいかないのかしら?せめて、そちらの席に座ってください。ここでは、ルーカスもアルフレッドも、護衛にそうさせてるわ」

護衛が不在の時も多いけど、なんてことは言わないでおく。ユリウスからそうするようにと視線で促された2人は、少し戸惑いながらも席に着いた。

「食事は?」

「いや、まだだ」

「じゃあ、ちょぅと待ってて」

グノーに注文を通して、仕上がりを待つ間に店じまいをしておく。

ユリウスは、なんだか疲れているみたいだけど……一人で食べるのもつまらないだろう。自分の食事も向かいに運んで、一緒に席に着いた。話を聞くのは食べた後だ。

「ライラ!!」

と思ったら、面倒な人が来てしまった。

「俺以外の男と食事するなんて!!おい、ユリウス。俺の番に手を出すなよ!!視界に入れるな、入るな!!」

「ルーカス!!」

思わず立ち上がった護衛を視線で牽制しつつ、ルーカスをいさめる。

「バカなこと言ってないで、ほら。ルーカスも座って」

素直に従うあたりは、可愛げがある。けれど、私にぴったり身を寄せて、そこかしこ触ってくるのはやめて欲しい。








< 140 / 156 >

この作品をシェア

pagetop