鬼の棲む街



「石山さん、ちょっと良いかしら」



登校して早々に呼び出されるとか今日は厄日?

まぁ、これも慣習化してきてるから『またか』と思えて不思議


「なに?」


「此処ではちょっと」


そう言って教室に視線を向ける女
大勢の前では言い難いということだろうか

そんなこと私には関係ない


「暇じゃないからお断り」


「は?」


まさか断られると思ってなかったのか視線を戻すと眉間に皺を寄せて睨んできた


この程度で私が怯むとでも思ってるならめでた過ぎるでしょ


「聞こえなかった?暇じゃないの」


「・・・石山さんの都合は聞いてないわ!」


急に声まで荒げて益々不愉快


「私に用事があるのに私の都合聞かずに済むはずないでしょ」


呆れたように言い放つと
この失礼な女に付き添っていた気の弱そうな女二人が失礼な女の制服を引っ張って応援し始めた


「スズちゃん。頑張って」

「スズちゃん。ここで負けちゃダメ」


なんだろう・・・この構図
不愉快過ぎて相手にもしたくはないけど


あっという間に教室中の視線を集めるからイライラしてきた


「言いたいことがあるなら此処でどうぞ」


座ったまま失礼な女を見上げると


「わ、私の彼を返してよっ」


吃りながら真っ赤な顔で叫んだ


「・・・は?」


「この、泥棒猫っ」


「・・・は?」


「彼と付き合って明日で二ヶ月なの
デートしようって約束してたのに急に行けないって・・・聞いたら
『石山さんが好きなんだ』って言うの
あんた!彼に何したのよっ!」











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