コインの約束
シュートを決めた和真はコートから抜け出し、私の真下まで来ると、2階にいる私に向かって
「芽衣、見とれてただろ。俺から、目を離すなよ」
笑いながらそう言うと、私に手を振ってからまたコートに戻っていった。
一瞬、体育館内がシーンと静まり返る。
その3秒後、体育館中に男子の叫び声や女子の悲鳴が飛び交った。
ひゃー、顔が、熱い。
私は1階の人たちから見えないところまで移動して、隠れた。
なっ、なんなの、和真。超ド天然なの?
あんな大声で話しかけてきたら、皆に聞かれて当然じゃない。
誘われて観に来ただけなのに、なんで私がこんなに注目されなきゃならないの?
しかもさ、「俺に見とれてただろ?」って、何?
どれだけ自信過剰なのよ!
そりゃ、和真のバスケがかっこよくて目が離せなかったのは、悔しいけど認めるよ。
でも、それだけでしょ?
それだけだよね、私?
自分の感情が分からなくなって、混乱するよ。
どうしてこんなにドキドキしてるの?
今までに感じたことのない、感情。
この正体は、なに?