いけません、凪様
 私――七草美波(ナナクサ ミナミ)は真宮(マミヤ)家に仕えるメイドだ。

 私の母方の一族は代々この真宮家に仕えている家系なので、私も例に漏れず仕えている。
 お父さんも真宮家に仕えていたのだが、五年前に病にかかり亡くなった。その後、お母さんは私を女手一つで育てようと頑張ってくれた。けれど、頑張りすぎたのとお父さんがいなくなったことによるストレスで体調を徐々に崩して、お父さんが死んでから半年くらい経った時に亡くなった。

 当時小学五年生だった私は、父方の親戚に引き取られた。叔父さんと叔母さんは私を本当の子どものように可愛がってくれた。

 それから一年くらい経った頃、両親が仕えていた真宮家のことを思い出して、叔父さんと叔母さんに尋ねてみた。


「真宮家はね、玩具とお菓子をメインに扱っている会社の社長を代々している家系よ。確か、明治時代から続いてるのよね」


 叔母さんが優しくそう教えてくれた。代々社長をしているなんてすごいと思うと同時に、そんなすごい人に両親が仕えていたとは思わず、驚いた。

 現社長である伊織(イオリ)様はお父さんが入院していた時に、何度かお見舞いに来てくれて、私にも優しくしてくれた。お母さんが入院している時も、お見舞いに来てくれて、一人で心細い思いをしていた私の遊び相手になってくれた。

 お父さんだけじゃなく、お母さんまでも亡くなったショックでそのことをすっかり忘れていた私は、その時のお礼を言いたくて、伊織様に会いたいと頼むと、後日二人は私をその方に会わせてくれた。
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