丸重城の人々~後編~

【将大】

柚希「将大さん、いいんですよ!わざわざ貸切にしなくても………」
ある日のランチ。
柚希は将大と二人で、イタ飯屋に来ていた。

将大「ダーメ!できる限りのことはしたいから」
柚希「でもこの時間ってお店にとって稼ぎ時だし、他にもここでランチしたいお客さんもいますよ。
どっちにしても、申し訳ないです」
頬杖をついて柚希を見ていた、将大。
思わず、柚希の頭を撫でた。

将大「柚希ちゃんって、ほんと優しいんだね~!」
柚希「え?」
将大「前に付き合ってた女。
………って言っても、恋人とは言えない存在だったけど、その人は“貸切なんてすごーい!じゃあ、今度は◯◯のレストラン行きたーい。その次は◯◯”って凄かったよ!
前の奥さんも同じような感じだったし……
君と響子は揃って“そんなこのしないで”って言う。
なんだろ、この違い……」
将大は頬杖をついたまま、遠くを見るようにして言った。

柚希「それは悲しいですね……」
将大「え?悲しい?」
柚希「その人達…あ、恋人さんや元奥さんを悪く言うのは、いけないけど……
将大さんのこと、愛してなかったんですね。
きっと、将大さんが大きなヤクザさんの若頭さんだからそれを利用してたみたいに聞こえました。
将大さんは優しいから、相手を想ってしてることなのに………」
将大「君は…なんで……!」
柚希の言葉に、将大が俯き呟く。

柚希「将大さん?」
将大「時々…」
柚希「え?」
将大「わからなくなる」
柚希「将……え………?」

将大が柚希を、真っ直ぐ熱っぽく見つめていた。
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