再会は涙色  ~元カレとの想い溢れる一夜からはじまる物語~
「ありがとう」
まっすぐに瞳を見て言う理久の不意の言葉に、麻衣は我慢していた感情が溢れそうになる。
少し潤んだ瞳のまま、麻衣は「がんばってください」と理久を送り出した。

スポットライトの当たるステージに。

堂々と歌う理久の声。
のびやかに、艶やかに歌う理久の声。

全身に響いてくる。
麻衣はステージの裏からかすかにその姿を見られる暗幕の裏から、ステージの上の理久を覗く。

理久を見つめる観客も、泣いている人も、嬉しそうにライトを振っている人もいる。

瞳を輝かせながら理久を見つめるその視線に、理久が感じている感情が麻衣にも流れ込んでくる。

麻衣は、そっと自分のお腹に触れた。
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