運命なんて信じない
それから16年。
約束通り、奥様は陰から見守ってくれた。

そして、二十歳になった私は弁護士さんに呼ばれここに連れて来られた。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる女性と、穏やかに笑う男性。
後になって、平石社長と奥様だと教えられた。

奥様は今までのいきさつをすべて話したうえで、「これからどうするかは琴子ちゃんが決めなさい。大学卒業までの援助は約束するから。でも、もし琴子ちゃんが嫌でなかったら、ここに住んでくれないかしら?長い時間をかけて、私はあなたを娘のように思ってしまったの。たとえ短い時間でもいいから、娘を持った気分を味合わせてもらえない?」
真っ直ぐな目で見つめられて、私は言葉に詰まった。

簡単に答えられることではなかった。
それから2年考えて、私はこの家で暮らすことを承諾した。

もし、奥様の援助が無かったら今の私はいない。
もちろん大学にも進学していなかっただろうし、下手したら犯罪にだって手を染めていたかもしれない。
いつも誰かに見守られていると思うからこそ、真っ直ぐ生きてこられた。
恩返しになるかは分からないけれど、奥様の希望を叶えたいと素直に思った。
就職先も、奥様の勧めでHIRAISIに決めた。
そのことに後悔はない。
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