運命なんて信じない
「もういいだろう、いい加減本題に入ろう」

翼が改めて写真を差し出す。

「何の写真だ?」

「先月、自宅の階段から落ちた時の写真」

「随分、大怪我ね」
麗の冷めた声。

「そうなのよ。モデルのくせに顔に怪我なんて困っちゃったわ。麗なら分かるでしょう?」
美優さんが営業スマイルで答える。

やっぱり、この人怖いかも。

「専務には関係ないんだな?」
翼が核心を突く。

「もちろん。私の不注意なんですもの」
運ばれてきたアイスコーヒーを受け取りながら、
「心配させて、ごめんなさい」
と謝った。

「じゃあ、何で『デートDV』なんてタイトルになるのよ」
苛立ちを含んだ麗声。

「それは、私には分からない」
言いながら時計をチラッと見た美優さん。

美優さんの話はおかしい。
そもそもモデルが、怪我をした顔の写真を撮るだろうか?
普通なら、隠しておきたいと思うはず。
ましてや、アップするとか考えられない。
それに、
美優さんは『デートDV』とタイトルのついた写真が出回っていることを知っていた。
諸一の上で放置していた。それは、わざととしか思えない。

「美優さん。あなた嘘つきですね」

「はあ?」
思い切り睨まれた。
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