運命なんて信じない
3人が集まったのは行きつけの大衆居酒屋。
このザワザワした感じが、なぜか落ち着く。

「で、何か分かったの?」
麗が翼を見た。

「うーん。異物混入の投稿をしたのは二人。別々のサイトからで、一人は大学生。もう一人はサラリーマン」

「計画的にガセネタを流した訳ではないのね?」
麗が核心を突く。

「正直、それは分からない。俺の知り合いに大学生を知ってるって奴がいてそいつの話によると、最近やたら金回りがいいらしい」
「怪しいじゃない」

確かに。
もし誰かの嫌がらせだとすれば、実行してくれた人にはお金を出すだろうから。

「ただ、これ以上は本人から無理矢理聞き出すか、警察にでも訴えて金の流れを調べてもらうか。どちらにしても、俺たちの手には負えないだろう」

「そうね」
枝豆に手を伸ばしながら、麗が悔しそうな表情をした。

「美優さんの怪我はどうなの?」
ウーロン茶を飲みながら、私は麗を見る。

「嘘に決まってるでしょう?ただ、嘘だって証拠がないのよ。それどころか、都内のクリニックで診断書まで書かせてるらしくて」

診断書?
じゃあ、本当に怪我したって事?

「診断書なんて、金を積まれれば書く医者もいるのよ。嘘はダメだけれど、必用なところだけを誇張したり、都合の悪い事は消したりしてね。美優の場合もそんなクリニックの医者」
お医者さんがそんなこと。

「立花知り合いじゃないの?」
翼が口を挟む。

「もちろん知ってるわよ。ただし、そんなことする医者に限って口が堅いの。弱みでも握らないことには本当のことは言わないわ」

なるほど。
どちらにしても私達には手が出せないらしい。
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