運命なんて信じない
5日目。
ブブー ブブー
麗からの着信。

私は思いきって通話ボタンを押した。
「もしもし」
『・・・』
麗方が黙り込む。

まさか出るとは思わなかったらしい。

「麗、ゴメンね」

『琴子、何やってるのよ』

よかった、いつも口調。
変わらないでいてくれることが、嬉しい。

「ゴメン」

はぁー。
大きな溜息を1つ電話の向こうから聞こえた。

『賢兄が海外に行くわよ。琴子がいなくなったことでおじさまが怒って。2年ほど海外に行って、帰ったらお見合いだって』
「そんな」

『賢兄は、全部自分の責任だって言ったらしいわ』
麗が私を責めている。

何も言えず、私は黙り込んでしまった。

『考えてもみなさい。平石の力があればあなたを見つけるなんて簡単なこと。それをしないのは賢兄が止めたからよ』

確かに。
すでに5日ほどたつのに、こうしていられるのは賢介さんお陰かも知れない。

『琴子は自由になりたいんだからって、おじさまを止めたらしいわ』

「・・・ごめんなさい」
もうそんな言葉しか出てこない。

『謝る相手を間違ってるでしょう』
「うん」
わかっている。

『いつまでも隠れてないで、早く出てきなさい。みんな心配しているんだからね』
麗は言いたいことだけ言って、電話を切った。
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