運命なんて信じない
勤務後、社員通用口を出ると、何人かの記者が待っていた。

「麗さん。コメントをいただけませんか?」
こちら意思など関係なく、すでにカメラを向けている。

「どいてください」
道を塞がれ、いささか不機嫌気味に麗が言う。

「お母様のゴシップはつきませんけれど、娘さんとしてはどうなんですか?恥ずかしいとか、世間に申し訳ないとか、何かないんですか?」
挑発的な言葉。

これは、麗を怒らせるためにわざと言っているんだ。

「・・・」
麗は無視を続ける。

「これを機に、麗さん自身も芸能界復帰の噂もありますが?その為の売名行為ですか?」

本当に、なんて失礼な人達だ。
麗が何も言えないなら私が文句の一言くらい言ってやろうかとさえ思ったその時、
「行くぞ」
後ろから現れた翼が麗の手を引いた。

「新しい恋人ですか?」
「お前・・・」
ギロッと翼が睨む。

「どいてください」
私は2人の横に立ち、向けられているカメラのレンズを手で塞いだ。

程なくして、警備が出てきて私たちはタクシーに乗り込んだ。
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