運命なんて信じない
警察署の入口で翼と別れ、駐車場までやってきた私と賢介さん。

「琴子、乗って」

厳しい口調で言われ、私は賢介さんの車の助手席に乗り込んだ。

賢介さんが乗って来たのは、いつも私用で使っているドイツ製の高級外車。
普段は社用車か運転手付きの車で外出するから、使うのは完全にプライベートの時。
もちろん買い物などで私も何度か乗せてもらったことはあるけれど、正直今日は乗りたくない。
後ろめたいことがありすぎて、出来ることなら今すぐここから逃げ出したい。

「琴子、シートベルトを締めて」
「はい」

私の思いなんて無視するように、重たい空気を乗せた車は自宅ではなく都心に向かって走り出した。
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