運命なんて信じない
店を出て、さあこの先どこへ行こうかを話をしていると、
「麗」
背後から声がかかった。

「あれ、陸仁(りくと)さん」
麗の顔がほころぶ。

「こんにちは」
近づいてきた男性が私に会釈し、
「こんにちは」
私も挨拶を返した。

陸仁さんと呼ばれた男性は年齢30歳くらいで、ちょうど賢介さんと同じ歳くらいに見える。
身長は、180センチほどで、目鼻立ちのはっきりした精悍な顔立ちだ。
うーん、かっこいいな。
それに、どことなく賢介さんに似ている。

「随分大荷物だね」
手に持った荷物に気づき、男性が持ってくれた。

「ありがとう」
「すみません」

駐車場の車まで、謎のイケメンが荷物を運んでくれた。
そして、車に積み込むとそのまま立ち去ってしまった。


「あの人、知り合いなの?」
身に着けている服も、立ち居振る舞いも、ただものではなかった。
私が感じた印象的には、お金持ちなセレブで賢介さんと同じ匂いのする男性。
やはり彼の素性が気になって、私は麗に聞いてみた。

「彼は、平石陸仁(ひらいしりくと)さん。賢兄の従兄弟よ。平石建設の副社長で世間的には賢兄のライバルって言われている人」

ライバル?
賢介さんにそんな人がいたのか。
どうやら私は、賢介さんのことを何も知らないらしい。

「性格的には対照的な2人だけど、見た目はわりとは似てるでしょ?」
「うん、そうね」

何よりもまとっているオーラというか、雰囲気が同じ気がする。
遠ざかっていく後ろ姿を見ながら、御曹司って普通に街中にいるのねと私は思っていた。
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