【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 父の言葉を思い出すと、額にある古傷がズキンと痛んだ。
 ああ、よくない。思い返してもどうにもならないことで悩むのは、ストレスなしののんびり巣ごもり生活の天敵だ。

 こういうときは、眠ってしまうにかぎる。

 カーテンを開けられた窓から差し込む陽光が、祈りの小部屋をあたたかく照らしている。寒い冬のあいだは毛布を三枚重ねにして、さらに巨大な毛玉になって耐えた。
 最近では毛布一枚で過ごせるほど春めいているので、眠りやすくてありがたい。
 
 毛布に包まって眠り、起きたらご飯を少し食べて眠ろう。つぎに起きたら帳簿に向かってまた眠り、たまに兄からの手紙を読んだり、本を開いたりしてまた眠ろう。

 ここでそれを死ぬまで繰り返す。退屈ではないかと心配する人もいるだろうが、ルルにとって巣ごもりはまったく苦ではない。

 王女として人前に出て、なぜ魔力がないんだと糾弾される方がよほど嫌だ。
 それに、眠っている間は幸せなのだ。なにもかも忘れられるから。

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