禁忌は解禁される
一颯が13歳の時だった。

あの頃から、とても一颯に懐いていた颯天。
いつからか、弟への愛情から特別な愛情に変化していったのだ。

だから颯天が成人したら、颯天が養子だと言うことを話し、思いを伝え、二人で生きていきたいと伝えるつもりでいたのだ。
もちろん、そのことは颯太も知らない。

「好きな人に…他に想いを寄せている人がいることがわかったの。
だから………」
俯いて話す、一颯。

「そうか……わかった。
先方は、お前との見合いずっと待ってるからな!
連絡しておく」

「よろしくお願いします…」
そう言って、襖に向かう一颯。

その後ろ姿に、颯太が問いかけた。
「ちなみに…」
「え?」
「誰?好きな奴って」
「え…?
な、内緒…!」
「ふーん。
律子が生きてたら、お前をそんな顔にさせずに済んだかもな……
そんなにこの家が……この世界が嫌いか?」

「━━━━嫌い」

「そうか……」

「でも、ここにいる人達は好き。
お父さんも、銀くんも……颯天…も。
みんなとっても優しくて、よくしてくれるし。
まぁ…みんな私に気を遣ってるんだろうけど。
でも、この世界は嫌い。
ママを殺したから………」

「そうだな……」

「お父さんやみんなだって、私がいない方がいいでしょ?
仕事しずらいだろうし…」

「あ?」
「え━━━?」
颯太の雰囲気が変わった。

「そんなわけねぇだろ?
俺にとっては、お前と颯天が一番の宝物だ。
律子が命懸けで守ろうとした二人だし、俺にとっても命そのものだ!
いいか……
もう二度とそんなこと言うなよ…?」

普段、特に一颯には穏やかで優しい颯太。
だがこの時だけは、鋭く……それこそ組長に相応しい恐ろしい表情で一颯を見据えたのだった。


「はい…ごめんなさい…」

部屋を出て、ため息をつく一颯だった。
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