【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
美波の親友
 翌日も、翌々日も、その次も。
 あずみとはひとことも話さずに終わってしまった。
 同じクラスなのだから、話さないのは不自然だろう。周りの友達からも、直接聞かれなかったけれど、不思議そうな視線は向けられてしまった。
 これ以上続けば、流石に「どうしたの?」とか聞かれてしまうだろう。
 そうしたら原因を話さなくてはいけない。
 『北斗とツーショットの写真で【スターライト ティーンズ】に載った』ということも話さなければいけないのだ。
 それは流石にためらわれた。
 だって、なにかの間違いでほかのひとたちにも知れてしまったら?
 そうしたら今度、友達同士の喧嘩では済まなくなるかもしれないではないか。
 最悪、北斗のファンの女の子からいじめられるようになってしまうかもしれない。
 だからその点については、ほかの子たちに話すつもりはなかった。
 けれどこのままあずみとの喧嘩が続けば、話さなくてはいけなくなるだろう。
 それを避けるには早くあずみと仲直りしてしまうのが良いのだけど、美波はなかなか切り出せなかった。
 北斗に「少し頭を冷やしてから」と言ってもらえたのもある。
 あのときは二人とも、突然のことだったのだ。
 あずみは頭に血がのぼっていただろうし、美波はバレてしまったことに動揺していた。
 落ち着いていなかったのだ。
 だから今度は落ち着いて話さなくてはいけない。繰り返してはいけないのだ。
 それにはやはり時間を置くしかないのである。時間が経てば、気持ちも落ち着いていくから。
 でも美波は寂しかった。
 同じクラスで、小学校からの親友で。ずっとそばにいたのに。
 それがもう一週間近く、ろくに話していない。
 寂しいし、悲しいと思う。
 そりゃあ、喧嘩くらいしたことはある。何度かある。
 でも毎回、仲直りしてきた。
 だから大丈夫、今回も、きっと。
 美波はそう言い聞かせた。
 そして次の週。週末を挟んで、月曜日。
 その日もいつも通り授業が進んで、昼休みになった。
 いつも通り友達同士、机をくっつけてお昼にしようと思ったのだけど。
「ねぇ、美波」
 そこで不意に声がかかった。
 美波はどきっとしてしまう。振り向くとそこにあずみがいた。
 そのことに、違う意味でどきっとした。
 あずみの表情。
 あのときとはまったく違っていた。
 少し表情が固い。
 でもあのときのように、怒りではないように、美波には感じられた。
 どちらかというと、緊張?
 そのように感じた美波の前で、あずみは手にしていたものを、ちょっと持ち上げた。
 それはお弁当の包み。
「今日は外でお昼、食べない?」
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