元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 いずれも仲間と呼ぶには線のある者ばかり。しかし、ひとりで魔王と相対するよりはよほどいい。

(不安になってはだめ。勇者がそんなことを考えるなんて許されることじゃない)

 緊張か、恐れか、震える手を押さえ込んで深呼吸する。そして、集まった仲間たちに作りものの笑顔を向けた。

「きっと険しい旅になると思います。どうぞよろしくお願いしますね」

「こちらこそ、ティアリーゼ様」

 よそよそしい声が寂しい。仲間といっても、彼らがティアリーゼに踏み込もうとしていないのは明白だった。

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