元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
その身を飾るは愛と言う

 ある朝、ティアリーゼは目を覚ましてぎょっとした。

 隣にいるはずのシュクルがいないだけなら、まだ驚かない。

 そこにあったのはシュクルどころか、半透明に透けた謎の何かだった。



(なに、これ……)



 恐る恐る触ってみると、つるりとしている。

 意外にも柔らかく、しなやかだった。

 布に近いが、向こうの景色が薄く透ける布など一昼夜で完成させられるものではない。そもそも、そうだとしてなぜティアリーゼの隣に置いておくのかという話である。

 しかも、それはいくつも落ちていた。

 ティアリーゼの手のひらくらいの大きさのものもあれば、胴を一回りするほど横に長いものもある。

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