だけど本当は、きみが最初で最後の恋


後悔するなと言われたって、未来なんてわからないから、未来になってからじゃないとどの行動が後悔してしまうようになるのかなんてわからない。

─── なんて屁理屈をただ並べてる。


だけどきっと本当は矢川先生はあの時後悔するな、が言いたかったんじゃない。

つまんねー言い訳してんじゃねえよって言いたかったんじゃないかな。



「ごめん。明日からしばらく送り迎えできなくなった」

「……」

「代わりは弥生に頼んでるから。本当にごめん」


成咲に頭を下げてあやまられたのはあの事件以来だ。


「べつに、もともと頼んでなかったし」


なんで送れなくなったかくらい言ってけよバカ。


「朝からアンタの顔見なくて済むからむしろありがたいくらいだし」


言ってくれないなら聞けばいいのに、なんで聞けないんだよバカ。


その言葉は夜、突然電話で言われたから、アイツがどんな顔で謝ってきたのかもわからない。

ただ声だって変わったはずなのにあの時の小さな天使みたいだった成咲と重なった。


あやまらなくていい。

ふつう毎日朝と放課後一緒に帰って、遊びに行くにも心配するされるの幼なじみなんてへんだよ。

お互い彼氏彼女はいないけど、アイツはモテる。カッコつけてるから。それでも彼女をつくらないのは、できないのは、あたしと一緒にいるからだ。


一緒にいる理由なんてない。

あの事件は理由にならない。

大学でようやく離れられるって清々してるんじゃないかな。あんな約束守らなくて済むんだって。モテ生活満喫してやるぞって。…腹立ってきたな。でも、引き留めることなんてできない。


あたしたちは、くされ縁の幼なじみだ。

ただあの事件を、引きずってるだけ。

本当は送り迎えができないからってあやまられるような関係じゃない。


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