だけど本当は、きみが最初で最後の恋



「おれのことが好きなら、付き合って。幼なじみじゃなくて、彼女になって」


花火でよく聴こえなかったけど、まあきっとそんなようなことを言ったと思う。


「いや、でもあたし、アンタと手繋ぐのとかイメージできないんだよね。付き合ったら、そういうの、するでしょう?」

「じゃあ繋いでみるから」


花火で照らされた成咲の顔は、まあタイプではないけど、良いなって思う。


手のひらにかざされたぬくもりはゆっくりと絡んでく。

隙間なくぎゅっとされて、体温は3度くらい上がった気がする。


「…どー?」


コイツももしかして不安なのかな。
仕方ないな、と握り返す。


「わるくない、けど」

「けど?」

「…心臓がばくばくしてる……」


どんな状況かを訴えるように伝えると、成咲は背中を丸めてあたしよりも低く屈んで、すくうようなキスをしてきた。


花火は見たいけど、そっとまぶたを下ろす。

最近ゆるしてあげてばかりだなって、なんだかんだ成咲に甘い自分に気づいた。


次の花火が打ちあがるころにくちびるが離れてく。


「…で、成咲は、あたしのこと……きらいじゃないんだよね?」


これできらいって言われたらどうしよう。さすがにボーリョクじゃ済まない。彼女になんてなってやらない。だから…好きって言ってほしい。

そう思っていたら成咲がげらげらと笑い出した。


いや、なんなのコイツ。


「もういい!」


言葉を欲して何がわるいの?真剣に聞いたのに。やっと素直になれたのに。

心のなかで毒づいてにらみつけると、身体をぎゅっと抱き寄せられた。



「今までずっと好きだったよ」


そんな素振りなかったんですけど。


「むしろなんで気づかねーの?とーかって本当に鈍感だよな」



なんか、やっぱり一言余計だし、釈然としない。

だけどまあ、あたしのほうがオトナだから、甘く採点してあげてもいいかもしれない。

初めての成咲の腕のなかは、心臓の音がうるさくて、可愛かった。


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