だけど本当は、きみが最初で最後の恋


アイツ、何考えてるんだろう。

なんであたしにあんなことしたんだろう。

だって、あたしのこときらいなくせに。

どーでもいいって言うくせに。


…って、それはあたしも同じか。


自分のなかだけじゃ処理しきれない。ぜんぜんわからない。だけど相手に突き付ける勇気もないし、誰かに話す、なんて…なんでアイツのことで悩んでるみたいな、相談みたいなことしなくちゃならないの?ありえない。

どうにか自分で抑えなきゃ…この、身体中を駆け巡る、死因にもなり得そうなこの気持ちを。


このままじゃ学校どころじゃない。

アレはもう、事故だと思おう。それが一番いい。もしくは犬とかトラックとぶつかっただけ、とかさ。



「行ってきます」

「…気を付けてね。学校着いたときと出るとき、連絡してね」


その言葉にろくな返事もせずに玄関を出る。

と。ちょうどのタイミングでバイクの音が近づいてきた。


「は…?」


なんで?

まだぜんぜん、いつもより1時間近く早いんだけど。

昨日の今日でなぜ来れる!?


わたしが乗るときは貸してくれてるフルフェイスのヘルメットを取る。ミラーで髪を整えてる姿が無性にうざったくて、何も見なかったことにしようと歩き出す。


「とーか」

「……」

「聞いてんの?」


聞きたくないから反応していないのになんでわかってくれないんだろう。

ずいずい近づいてくるけど、神経無いのかな。

あたしは夜も眠れなくて、思い出したくもないのに思い出して、ひとりでのたうち回っていたっていうのに、コイツにとってはなんてことなかったのか?


「昨日、その……無理やり、悪かった。ごめん」


あやまられたい、わけではない。

それにその台詞はきっとまあ、そういうことなんだろう。


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