君じゃなきゃ。


小さくため息をつきながらエレベーターを下りて出入り口へ足を進めていると、向いから一人の女の子が歩いてきた。


「あ、さくら!今終わり~?」

会社に帰ってきたのは、あたしに向けて右手をひらひら振るメグミだった。


「メグミ!?今営業から帰ってきたの?!」

「そう!疲れた~……。ちょっと上客だったから……愛想振りまいてしゃべりまくってたらこんな時間になっちゃった!」


お客様相手の営業だからよくあることとは言え……定時2時間もすぎた人はなかなか見たことがない。


メグミなりに頑張ってるんだろうな……。


「あっ!ねぇさくら!今から時間ある?」


腕時計を見て今の時間を確認したメグミはあたしに聞いてきた。

< 119 / 357 >

この作品をシェア

pagetop