君じゃなきゃ。
「定時もきたし……そろそろ行こうか」
先輩が少し控え目な声で誘ってくれる。
なんだかそんなことがとても甘酸っぱく感じて胸がキュッと締め付けられる。
……いよいよだ。
「はい、じゃぁ……出ましょうか」
意を決して席を立った時、
「あっ!竹下くん!ちょっと!」
課長が先輩を呼ぶ声がした。
「はい!ごめん、相川さん、先に下で待ってて?」
先輩はあたしに苦笑いを向けてから課長の席に急ぎ足で向かった。