羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
それは……と言葉に詰まって、それから何とか言葉を紡いだ。
「でも、未来が決められてるなんておかしいですよ。普通は結婚する前から子どもの話なんてしないし! 私、突然社長に呼び出されて、怖かった。しかも子どもの話までされて! こんなの普通じゃないでしょ!」
言い出したら止まらなかった。
先輩みたいに特別な人たちはみんなちゃんと決めてて、迷いがない。私はいつだって迷ってるし、戸惑ってる。
その差が、不安で、辛くて、怖くて……。
今までのそんな思いが飛び出すように、私の言葉は止まらなかった。
先輩の眉が不機嫌そうに寄る。そのしぐさに胸が不安でどきりと跳ねる。
「みゆは『普通』っていつも言うよね。俺はみゆと普通の夫婦になりたいんじゃないよ」
そんなの初めて言われて、私は驚く。そんなに普通って言ってた?
でも普通の何が悪いの。当たり前に特別な先輩にはわからない。
「私は、普通の夫婦になりたいんです。結婚してゆっくり子どものことも考えて、子どもがもしうまれて大きくなって独立したら、二人で縁側でお茶飲んで世間話して」
って今、私は何言ってるんだろう。もう混乱して訳が分からなくなっていた。
なのに先輩はいつものように、私の話を真剣に聞いてくれる。
「でも、それ本当に普通かな? 縁側でお茶飲みたいならいくらでもつきあうって」
「違います! そういうことじゃない!」
「なにが違うの。俺ってそんなに普通じゃない?」
先輩の声に、『先輩は普通じゃない』って言ってたみたいで、後悔の念が身体を駆け巡る。でも止まらなかった。